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    このブログは,多くの受験生の方が司法書士試験に合格するために開設しました。
    疑義問(6-2)

     こんにちは。

     前回の続きをやりましょう。

     疑義問(6-1)


     以下の過去問を取り上げています。

    【問題1-平成12年度二次試験第12問オ】

     相続による根抵当権の移転の登記がされた後,指定根抵当権者の合意の登記を申請する前に,他の事由で元本が確定した場合であっても,相続開始後6か月を経過する前であれば,指定根抵当権者の合意の登記を申請することができる。



    【問題2-平成16年度午後の部第20問オ】

     確定前の根抵当権の債務者について相続が開始した後に,当該根抵当権の元本が確定した場合には,相続開始後6か月以内であれば,根抵当権者と根抵当権設定者との合意により指定債務者を定めて,その登記を申請することができる。


     

     僕は, 【問題1】はぎりぎり「正しい,【問題2】は「誤り」と考えていますが,皆様がお持ちの過去問集だと両方「正しい」という解答が示されていると思います。

     択一式問題としてはそれでいいと思いますが,前回示したとおり,この論点は,記述式問題の論点として取り上げられる可能性があり,また,記述式問題として取り上げられた際には,正しい知識がないと致命的なミスとなる可能性があるため,ここで正確な知識を得ておいてください。


     では,解説していきます。
     

     【問題1】【問題2】の根拠は同じで,次のとおりです。


     相続による根抵当権の移転又は債務者の変更後,合意の登記をするまでの間に他の事由で元本が確定した場合でも,相続開始後6か月以内であれば,合意の登記をすることができる。




     その理由は,

     指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記は,相続開始後6か月以内にしなければならないとされているだけで,元本の確定前にしなければならないとはされておらず,また,指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記をすれば,相続開始後他の事由で元本が確定するまでの指定根抵当権者が取得した債権又は指定債務者が負担した債務が担保されるという実益がある

     というものです。


     これを【問題1】【問題2】に当てはめると,いずれも「正しい」という結論になりそうです。

     しかし,上記の根拠・理由には,重要な事実が抜け落ちています。

     それは,合意自体は,他の事由による元本の確定前にしておかなければならないということです(登記研究312号P47)。

     根抵当権者又はその債務者に相続が開始した状態は,元本が確定しているとも確定していないともいえない「浮動状態」と呼ばれ,この浮動状態の間にすることができるのが,指定根抵当権者又は指定債務者の合意です。

     他の事由により元本が確定してしまった場合には,もはや浮動状態とはいえず,指定根抵当権者又は指定債務者の合意をすることができません。


     このことをまとめますと,

     ①相続
     ②指定根抵当権者又は指定債務者の合意
     ③他の事由による元本の確定

     の場合は,相続開始後6か月以内であれば,指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記を申請することができますが,

     ①相続
     ②他の事由による元本の確定
     ③指定根抵当権者又は指定債務者の合意

     の場合は,そもそも③の合意が無効であるため,指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記を申請することができません。


     では,ここまでの内容を【問題1】【問題2】に当てはめましょう。

     ポイントは,合意の時期と他の事由による元本の確定の時期の前後関係です。


     【問題1-平成12年度二次試験第12問オ】

     相続による根抵当権の移転の登記がされた後,指定根抵当権者の合意の登記を申請する前に,他の事由で元本が確定した場合であっても,相続開始後6か月を経過する前であれば,指定根抵当権者の合意の登記を申請することができる。



     【問題1】は,指定根抵当権者の合意がされた時期が明らかにされていませんが,これがちゃんとされていると読むこともできるため,「正しい」と判断することができます。

    【問題2-平成16年度午後の部第20問オ】

     確定前の根抵当権の債務者について相続が開始した後に,当該根抵当権の元本が確定した場合には,相続開始後6か月以内であれば,根抵当権者と根抵当権設定者との合意により指定債務者を定めて,その登記を申請することができる。



     【問題2】は,どうでしょうか?

     他の事由により元本が確定した場合でも,相続開始後6か月以内であれば,「根抵当権者と根抵当権設定者との合意により指定債務者を定めて」とあり,他の事由による元本の確定後に指定債務者の合意をしていることが明らかであり,「誤り」と判断せざるを得ません。

     【問題2】につき,なぜこのようなことになったのかというと,おそらく試験委員が上記の登記研究の見解を知らなかったからです。

     安易に【問題1】(平成12年度二次試験第12問オ)の債務者バージョンを作成したことが原因と考えられます。

     最後に皆様に認識していただきたいことは,これが記述式問題の論点として出題されたときの怖さです。

     「実益」だけで指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記をすると大変なことになります。

     根抵当権で最も重要な論点である元本の確定の有無の判断を誤ることになるからです。


     ところで,指定根抵当権者又は指定債務者の合意の登記の論点として他に存在するのは...

     小さい論点ですが,予想されるものは一つです。 
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    疑義問(6-1)



     こんにちは。

     直前期に過去問を演習する方も多いと思いますが,どのように演習するかが非常に重要です。

     その点についても,オンライン個別学習相談でお話しさせていただいております。

     ぜひご利用ください。






     今回は,疑義問企画の続きですが,根抵当権者又はその債務者の相続という令和2年度の不動産登記法の記述式問題で出題される可能性が高いテーマですので,しっかり解説していきます。

     ちなみに,根抵当権の債務者の相続の論点は,昭和58年度平成18年度平成23年度において出題されています。

     この3回の出題は,その都度アレンジが加えられており,昭和58年度を基本とすると,平成18年度は相続開始後6か月を経過した後に合意の登記を申請することの可否が,平成23年度は指定債務者の合意の登記後の追加設定の登記の論点が,それぞれ問われています。
     
     まずは,その疑義問を解いていただきます。

     疑義問は2問あるのですが,僕の中で非常に「似ている」年度である,平成12年度平成16年度の問題です。

     これを解いていただくに当たっては,独立の設問として,正確な知識をもって解答してください。


    【問題1-平成12年度二次試験第12問オ】

     相続による根抵当権の移転の登記がされた後,指定根抵当権者の合意の登記を申請する前に,他の事由で元本が確定した場合であっても,相続開始後6か月を経過する前であれば,指定根抵当権者の合意の登記を申請することができる。



    【問題2-平成16年度午後の部第20問オ】

     確定前の根抵当権の債務者について相続が開始した後に,当該根抵当権の元本が確定した場合には,相続開始後6か月以内であれば,根抵当権者と根抵当権設定者との合意により指定債務者を定めて,その登記を申請することができる。



     僕は,次に根抵当権者又はその債務者の相続が問われる際には,今回の疑義問が論点となり得ると考えています。
    疑義問(5)

     こんにちは。

     何と,5年振りに,あの企画をやります。

     疑義問です。誰も知りませんね。


     【開講予告】疑義問(0)
     疑義問(1)
     疑義問(2)
     疑義問(3)
     疑義問(4)




     今回扱うのは,この問題です。


    【H14-am2-ア】

     Aは,代理権がないにもかかわらず,Bのためにすることを示して,Cとの間でB所有の甲土地を売却する旨の契約を締結した。
     Bは,Aから甲土地の売買代金の一部を受領した。この場合,Bは,Aの無権代理行為を追認したものとみなされる。





      
      H14-am2-アは,誤りです。


     これまでの過去問演習の経験を活かし,H14-am2-アを「正しい」と判断した受験生の方が多いのではないでしょうか?

     多くの過去問集では,H14-am2-アが正しいと記載されていますが,無権代理行為の追認については,法定追認に関する民法125条の規定は類推適用されませんので(最判昭54.12.14),H14-am2-アが正しいはずはありません。

     にもかかわらず,多くの過去問集にH14-am2-アが正しいと書かれているのは,次の2つの理由によるものと思われます。


     まず,「他の設問との関係」です。

     H14-am2は,「判例の趣旨に照らし誤っているもの」を選択させる問題でしたが,H14-am2の各設問には,誤っているものとしてイウがあり,H14-am2-アは,イウを組み合わせた3が正解となる問題であったため,正解に絡まないアを,正しいと判断する余地はあるでしょう。

     しかし,司法書士試験においては,誤っているものを選択させる問題で誤っている設問が3つある問題や,逆に,正しいものを選択させる問題で正しい設問が3つある問題が出題されますので(この点につき「続々・禁断の出題」参照),他の設問との関係でH14-am2-アを正しいと判断する考え方は,通用しないというべきです。


     次に,「黙示の追認」です。

     上記のとおり,無権代理行為の追認については,法定追認に関する民法125条の規定は類推適用されませんが(最判昭54.12.14),本人のした行為が黙示の追認ということになれば,もはや本人は,追認を拒絶することができなくなります(この点は,昭和58年度一次試験第1問3H23-am6-イにおいて出題されています。)。


    <参考>

    【S58-am1-3】

     Aから代理権を与えられたことがないにもかかわらず,BがAの代理人としてCとの間で不動産を買い受ける旨の契約を締結した場合において,Aが,Cに対して,その契約の目的物の引渡しを請求したときでも,その契約を追認したことにはならない。[×]


    【H23-am6-イ】

     次の対話は,無権代理に関する教授と学生との対話である。
    教授: Aの代理人であると称するBが,Cとの間で,Aが所有する甲建物の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したところ,Bが代理権を有していなかったという事例を考えてください。
        この事例において,BがCから受け取った売買代金をA名義の預金口座に入金し,Aがこれを認識しながら6か月間そのままにしていたという場合には,Aは,なお追認を拒絶することができるでしょうか。
    学生: 追認があったかどうかが問題になりますが,黙示の追認がなかったとしても,取り消すことができる行為の法定追認について定めた規定の類推適用により,本件売買契約を追認したものとみなされますので,Aは,もはや追認を拒絶することができなくなります。[×]






     しかし,例えば,本人が相手方に対し無権代理人が購入した不動産の引渡しを請求した場合であれば,本人に黙示の追認があったといえますが,本人が無権代理人から無権代理行為によって得た金員を受領した場合では,本人に黙示の追認があったとはいいにくいでしょう。

     仮に,本人が無権代理人から無権代理行為によって得た金員を受領した場合にも黙示の追認があったといえると考えたとしても,H14-am2-アは,誤りと判断すべきです。

     なぜなら,H14-am2-アにおいて,BがAから甲土地の売買代金の一部を受領する行為が黙示の追認といえるのであれば,Bは,Aの無権代理行為を「追認したことになる」のであり,わざわざ「追認したものとみなされる」わけではないからです。

     「黙示の追認」は,「追認」そのものであり,「みなされた追認」ではありません。
      

     以上により,H14-am2-アは,誤りと判断すべきです。
     





     ややこしい話をしましたが,H14-am2-アと同じ問題文の問題は二度と出題されませんし,この論点に関する最新の出題であるH23-am6-イはちゃんとした出題ですので,以下のまとめを押さえておいてください。

    1 無権代理行為の追認については,法定追認に関する民法125条の規定は類推適用( される   されない )。
    2 本人が無権代理行為の相手方に履行を請求した場合,黙示の追認と( なる   ならない )。
    3 本人が無権代理人から代金を受領した場合,黙示の追認と( なる   ならない )。
    4 本人が無権代理行為の相手方から代金を受領した場合,黙示の追認と( なる   ならない )。


    疑義問(4)
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     こんにちは。

     今日も,疑義問です。

     疑義問(1)
     疑義問(2)
     疑義問(3)


     前回の記事は,この時期だからこそ,本試験の現場における極限状態の時に役立つことを書きたいと思って書いたのですが,とてもお伝えし辛い内容なので,今回も同じテーマの過去問を扱います。

     ただ,今回扱う過去問は,昔取り上げたことがあるので,気になる方は,探してみてください。


    【H24-pm17-1】

     相続を登記原因とし,胎児を登記名義人とする所有権の移転の登記をした場合において,その胎児が生きて生まれたときは,出生を登記原因としてその氏名の変更の登記の申請をすることができる。



     正誤は,法務省の発表よると「○」になります。

     僕も,この設問は,「出生した場合に名変登記を申請すること」を問う趣旨ですので,「○」で良いと思うのですが,厳密にいうと,この設問は「×」です。

     これは,申請すべき登記は,出生を登記原因とするその氏名及び住所の変更の登記であるからです。

     胎児名義で登記された際の住所は仮に母の住所を登記したものにすぎないからです。

     こういう正しい知識は,ちゃんと身につけておくべきです。

     でも,本試験の現場でこの知識を使用するかどうかは別問題です。

     僕は,そもそも単純正誤問題を設問1から検討することをおススメしませんが(なぜなら,平成22年度から平成26年度までの5年間の午前の部・午後の部を通じて単純正誤問題の正解が設問1であったことは,たった1回しかありませんから。),H24-pm17は誤っている設問を探す問題であるところ,設問1を最初に検討して「はい,正解は1~」と考えることは,雑すぎます。

     また,この設問と,H24-pm17の正解である設問5を比べて迷ったりすることも,絶対ダメです。


    【H24-pm17-5】

     判決によって所有権の移転の登記を申請する場合において,判決書正本に登記義務者である被告の住所として登記記録上の住所と現在の住所とが併記されているときは,所有権の登記名義人の住所の変更の登記をしないで,直ちに所有権の移転の登記を申請することができる。



     
     前回の記事で重要な以下の2つの事項。伝わりましたでしょうか?


     本試験の現場で正しい解釈ができることと合格することは異なる。

     明らかな例外除外等の設問は,正誤の判断を回避する。



     なお,答練・模試の猛者の方が不合格になってしまう原因で挙げられるのが「考えすぎ」という理由なんですが,僕は,前回と今回の記事の内容が理由だと考えています。


     ところで,H24-pm17-5に関連して覚えておいていただきたい知識があります。

     それは,以下の実例です。

     和解調書に基づいて登記権利者より抵当権の登記の抹消を申請する場合において,登記義務者の登記記録上の住所と現住所が当該和解調書に併記されているときは,変更証明情報の提供を省略することができる(登記研究747号P67)。



     併記は,名変の省略はできないが,変更証明情報の省略はできると覚えておきましょう。

     
     では,また。


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    疑義問(3)
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     こんにちは。

     今日は,疑義問をやりましょう。

     疑義問(1)
     疑義問(2)

     今回取り上げるのは,以下の設問です。

     今までの設問と異なり,法務省が問題の持ち帰りを認めるようになった後,というか最近の過去問ですので,「当時のアルバイトの方が問題を間違えて覚えて帰ってきた」というのがあり得ないです。


    【H22-am9-イ】

     A,B及びCが,その共有する土地について分割をしない旨の合意をしていた場合には,Aからその持分を譲り受けたDは,当該土地の分割を請求することができない。



     この設問は,各予備校まずい設問であることは分かっているものの,正誤を何となく「正しい」にしていると思います。すなわち,「共有物分割禁止の定めがある以上,Dは,共有物の分割を請求することができない。」としていると思います。
     
     でも,共有物分割禁止の定めは,登記事項であるため(不登法59条6号),その登記がなければ第三者に対抗することができません(民法177条)。

     【H22-am9-イ】においては,A,B及びCがその共有する土地についてした共有物分割禁止の定めが登記されているか否かが明らかではなく,Aからその持分を譲り受けたDが当該土地の分割を請求することができないとはいえないため,「誤り」と判断すべきです。

     これが正しい解釈であり,もしかしたら皆さんのお手持ちに過去問集にも付記されているかもしれません。


     ここで,僕は,皆さんにお願いしたいことがあります。

     
     それは,上記の正しい解釈は,

     絶対に本試験の現場でしないでください。


     これは,皆さんに伝えるのが非常に難しいのですが,本試験の現場で正しい解釈ができることと合格できることとは違うんです。

     【H22-am9-イ】の見て,「共有物禁止の定めが登記されていないからDは共有物の分割請求ができる。」と考え,即座にその正誤を「誤り」と判断することは,ダメなことです。

     ここで,「これ民法の問題だから登記のことをそんなに重視しないのではない?」とか,「単に登記の有無を見るだけで正誤の判断ができる問題なんて出るかな~。」とかそういうことを考えて,正誤の判断を回避することが重要です。

     なお,法務省が【H22-am9-イ】の正誤をどちらにしているかは不明です。

      【H22-am9】は,【H22-am9-イ】の正誤を「正しい」としても「誤り」としても,正解は5で変わりません。

     この点に関しては,以下の記事をお読みください。

     ・ 禁断の出題
     ・ 続・禁断の出題

     今日の内容が皆さんに伝わることを願っています。

     ただし,伝わらなかった場合に備えて,次の疑義問も【H22-am9-イ】と同じタイプです(笑)。




     まだまだできることはあります。

     絶対時間を見捨てないでください。


     では,また。


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    疑義問(2)
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     こんにちは。

     今日は,疑義問をやりましょう。

     疑義問(1)

     今回取り上げるのは,以下の設問です。


    【S58-15-4】

     ある不動産の所有者Aが死亡し,その相続人は甲及び乙である。
     その不動産につき,乙が相続放棄をしたにもかかわらず,その単独名義に相続登記をし,これを丙に譲渡した場合には,甲は,丙に対し,所有権の全部を主張することはできない。



     
     多くの過去問集には,次のように書かれていると思います。


     解答:誤り

     相続の放棄の効力は何人に対しても効力を生ずるため,相続の放棄をした乙から不動産を譲り受けた丙は所有権を取得できず,甲は,丙に対し,所有権の全部を主張することができる(最判昭42.1.20)。


     でも,結論及び理由は,おかしいです。


     相続の放棄をした者が相続財産である不動産を処分する行為は単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号,内田貴・民法Ⅳ(補訂版)P352)。

     【S58-15-4】において,乙は単純承認をしたものとみなされ,丙は不動産の乙持分を取得することができるため,甲は,丙に対し,所有権の「全部」を主張することはできないということになります。

     したがって,【S58-15-4】正しいです(これにより,S58-15は解答不能となります。)。


     ところで,【S58-15-4】は,最判昭42.1.20を根拠としているところ,最判昭42.1.20は相続の放棄は登記なくして第三者に対抗することができるとしたものなので,この結論との整合性が問題となります。

     でも,最判昭42.1.20の要旨は,次のとおりであり,相続の放棄をした者からの譲受人が登場したのではなく,相続の放棄をした者の仮差押債権者が登場しているため,単純承認がそもそも問題となりません。


    【最判昭42.1.20の要旨】

     相続人は,相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち,当該相続放棄の効力は,登記等の有無を問わず,何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて,相続の放棄をした相続人の債権者が,相続の放棄後に,相続財産たる未登記の不動産について,右相続人も共同相続したものとして,代位による所有権保存登記をしたうえ,持分に対する仮差押登記を経由しても,その仮差押登記は無効である。




     以上により,僕は,【S58-15-4】は,最判昭42.1.20の趣旨を看過した出題ミスと考えます。


     なお,最判昭42.1.20を題材とする問題は,H25-7-ア,H17-8-エ,H6-18-ア,H4-14-イで出題されていますが,いずれも第三者を差押債権者とする事例です。

     
     相続(遺言関係や遺贈関係を含む。)と登記は,一応出題可能性はあるので,最後に確認していただくようお願いします。


     では,また。


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    疑義問(1)
    【新しい電子書籍】


    NEW!!! 平成10年~平成26年までの民法の重要判例をすべて示しています。すべての問題について一問一答形式の設問付きです。
       民法の重要判例[平成10年-平成26年]


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    □ 商業登記規則等の一部改正の解説  
    □ 商業登記規則61条2項~4項の解説
    □ 平成26年会社法等一部改正の解説
    □ 平成26年会社法等一部改正一問一答問題集




    【直近の企画】

     本試験における民法
     本試験における不動産登記法(択一式問題)
     本試験における会社法及び商法
     本試験における商業登記法(択一式問題)
     
     自分裁判(1)
     自分裁判(2・完)

     商業登記における前提名変登記!?(1)
     商業登記における前提名変登記!?(2・完)

     本試験に棲む魔物(1)
     本試験に棲む魔物(2・完)

     補欠役員の論点(1)
     補欠役員の論点(2)

     区分建物の罠(1)
     区分建物の罠(2)
     区分建物の罠(3・完)

     昭和VS平成(1)
     昭和VS平成(2)
     昭和VS平成(3)
     昭和VS平成(4・完)

     定款の自動変更(1)
     定款の自動変更(2)
     定款の自動変更(3・完)




     こんばんは。

     予告通り,疑義問開講します。

     ガイダンス的なものは,以下の記事をお読みください。

     参考:  【開講予告】疑義問(0)

     記念すべき第1回に取り上げるのは,以下の設問です。


    【S59-2-2】

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合を除き,許されない。




     まず始めにお断りしておくことがあります。

     それは,上記【S59-2-2】の問題文は,本当に上記の問題文であるかは不明だということ。

     法務省が問題の持ち帰りを認めるようになったのは平成11年度のことであり,それよりも前は,予備校が雇ったアルバイトの方が問題文を暗記していた時代です。

     だから,基本的に古い過去問について,問題文の表現に拘りすぎることは,本当に無駄なことです。

     なぜなら,古い過去問の問題文の拘ることは,いつの時代の誰かも分からないアルバイトの方の記憶を信じるということですから。

     なお,予備校間でも古い過去問については問題文が異なるのでご注意ください。

     
     では,【S59-2-2】を検討しましょう。

     皆さんの多くは,【S59-2-2】の正誤を,正しいと判断したと思います。

     すなわち,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求はできると考えたということです。

     そして,多くの予備校の過去問集における解答も,同じだと思います。

     でも,本当にそうでしょうか?


     確認したい判例があります。

     最判平10.6.30です。

     要旨は,次のとおりであり,太字にしたのは僕です(以下判例を引用する場合において同じ。)。


     1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において,当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り,許されるものと解するのが相当である。




     読めばすぐに分かるとおり,この判例は,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の相殺は,原則として,できるとしたものです。

     ちなみに,この部分については,H24-2-オで出題済みです。

    【H24-2-オ】

     Aは,Bに対して有する1,000万円の貸金債権のうちの一部の請求であることを明示して,Bに対し,200万円の支払を求める訴えを提起した。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
     AのBに対する訴訟の係属中にBがAに対して請負代金2,000万円の支払を求める別訴を提起した場合には,当該別訴において,Aは,貸金債権の残部である800万円を自働債権として相殺の抗弁を主張することができない。[×]



     
     ここで再度確認しましょう。

     【S59-2-2】で問題となっていた点を。

     問題となっていたのは,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求ができるかどうかです。

     実は,上記最判平10.6.30は,この点についても明らかにしています。

     

     1個の債権が訴訟上分割して行使された場合には,実質的な争点が共通であるため,ある程度審理の重複が生ずることは避け難く,応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上,債権の一部と残部とで異なる判決がされ,事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そうすると,…1個の債権の一部について訴えの提起ないし相殺の主張を許容した場合に,その残部について,訴えを提起し,あるいは,これをもって他の債権との相殺を主張することができるかについては,別途に検討を要するところであり,残部請求が当然に許容されることになるものとはいえない




     判例は,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求ができるかについて,原則として,できないといっています。

     このように,最判平10.6.30は,明示的一部請求である前訴係属中における残部による相殺の可否残部の請求の可否について,違いを設けています。

      違いを設けた理由について,以下のように説明しています。

     

     こと相殺の抗弁に関しては,訴えの提起と異なり,相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり,相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから,1個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは,債権の発生事由,一部請求がされるに至った経緯,その後の審理経過等にかんがみ,債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存する場合を除いて,正当な防御権の行使として許容されるものと解すべきである。




     簡単にいえば,相殺は売られたケンカへの反撃なので仕方ないってことです。


     以上の解説を踏まえて,もう一度疑義問を確認しましょう。


    【S59-2-2】

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合を除き,許されない。




     今も皆さんの判断は,「正しい」ですか?

     違いますよね?

     正誤は,「誤り」です。

     なぜなら,

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合であっても,原則として許されない

     からです。


     各予備校(TACを含みます。)は,過去問を改正に対応させるだけじゃなくて,ちゃんと判例にも正確に対応させるべきです。

     【S59-2-2】 が疑義問となったのは,最判平10.6.30を踏まえた修正を加えていないからです。


     各予備校を代表して,皆さん,




     ごめんなさい!!!




     あと,明示的一部請求の判例を全般的に押さえておきましょう。

     こんな判例もありますよ。

     参考: 民事訴訟法の判例


     では,また。


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     では,また。


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