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    物上代位に関する最新判例
     こんにちは。

     今回は,物上代位に関する最新判例を説明します。




     抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって賃料債権に物上代位権の行使としての差押えをした抵当権者に対抗することの可否



     抵当不動産の賃借人が,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,賃料債権に物上代位権の行使としての差押えをした抵当権者に対抗することができるかが問題となります。

     この問題における争点は,511条が適用される一般債権による差押えと優劣について判断した最大判昭45.6.24(注)の射程が及ぶかどうか,及び最大判昭45.6.24の射程が及ばないとした場合の賃料債権に対する物上代位権の行使のための差押えと賃借人による相殺の優劣の判断基準です。

     (注) この判例は,債権が差し押えられた場合において,第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは,その債権が差押後に取得されたものでないかぎり,当該債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず,両者が相殺適状に達しさえすれば,第三債務者は,差押後においても,当該反対債権を自働債権として,被差押債権と相殺することができるとの説(無制限説)を採用したものです。

     この問題について,判例は,次のとおり判示しました(最判平13.3.13)。


     抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。



     この判例は,511条が適用される一般債権による差押と優劣について判断した最大判昭45.6.24の射程は及ばないことを前提としています。

     これは,最大判昭45.6.24は511条を文言どおり解釈していますが,同条は,差押えによる処分禁止効と相殺の可否に関する規定であり,実体法上の特別優先権の行使としての物上代位における被担保債権の優先性と相殺の調整について規定するものではないからです。

     そして,賃料債権に対する物上代位権の行使のための差押えと賃借人による相殺の優劣については,次のように整理することができます。

     ① 物上代位による賃料債権の差押えの前にされた相殺は,有効であり,その後の物上代位により覆滅することはない。

     ② 物上代位による賃料債権の差押えの後においては,抵当権設定登記前に発生した自働債権による相殺は,有効である。

     ③ 物上代位による賃料債権の差押えの後においては,抵当権設定登記後に発生した自働債権による相殺は,その弁済期が物上代位による差押え前に到来していても,相殺が破れる。




     というのが,最判平13.3.13の説明ですが,平成13年の判例は,最新判例とはいえませんので,ここからが物上代位に関する最新判例の説明になります。

     なお,上記最判平13.3.13の内容は,BU講座の民法でも,Anker民法でも説明していますが,以下の判例の説明はしていませんので,BU講座やAnker民法を利用されている方は,補充しておいて下さい。

     最新判例は,最判平21.7.3です。

     この判例は,次のとおり判示しました。

     担保不動産の賃借人は,抵当権に基づく担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができるというべきである。



     この判例は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後も,担保不動産の所有者は賃料債権等を受働債権とする相殺の意思表示を受領する資格を失うものではないとし(最判昭40.7.20参照),上記最判平13.3.13を引用し,『賃借人が抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権については,賃料債権と相殺することに対する賃借人の期待が抵当権の効力に優先して保護されるべきである』とした上で,担保不動産の賃借人は,抵当権に基づく担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができるというべきであるとしたものです。

     最判平21.7.3が出題される可能性はもちろんありますが,少なくとも最判平13.3.13まではきっちり押さえておくようにしましょう。

     では,また。

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