このブログは,多くの受験生の方が司法書士試験に合格するために開設しました。
    過去問解析講座(3)

     こんばんは。

     過去問解析講座(3)を始めます。

     前回の最後には,設問を抽象化する問題を出題しました。

     設問の抽象化とは,次に同一の判例等を題材とする問題が出題された場合に,その問題を見て,『あっ,過去問にあった!』ということを思い出すとともに(思い出すだけでは×),正誤の判断を正確にすることができるようにするために行う作業です。

     例えば,『代理』と『着服』という2つの用語から,皆さんはどういう設問が出題されているのか分かりますよね?分からない方は,基礎講座受講し直すか,竹下先生のデュープロか,山本先生のオートマかを読んでください。

     抽象化ってのは,そういうことです。

     過去に何度も出題されている判例等であれば,それらの出題を比較することにより,『この判例が出題される場合は,この用語は必ず使用されるんだな!』ってことが分かりますから,抽象化はし易いです。

     これに対して,一度しか出題されていない判例等になると,出題者によって表現が大幅に異なることがあるため,過去に出題があるのに失点してしまうってことが普通にあります。

     なお,失点の原因は,抽象化ができていないことももちろんですが,膨大な過去問の知識量に押し潰されている可能性もあることをお忘れなく。そのため,過去問を繰り返し演習しており,過去問集では王様(前回参照)という方は,抽象化にだけ集中できるので,有利です。(あまりいないとは思いますが)このブログをなぜか読んでいる初学者の方は,まずは,当該過去問集で正解できるよう(当たり前ですが,選択肢は使用しないこと。全問個数問題として解答してください。),テキストと過去問集を繰り返してください。絶対的な勉強量は,必要です。

     では,前回の答え合わせをしましょう。

    【設問1】(H19-10-ア)
     共有者の一人が共有者間の協議に基づかないで農地である共有地を造成して宅地にする工事を行っている場合には,他の共有者は,当該共有者に対して,当該工事の差止めを請求することができる。

    【設問2】(H17-10-エ)
     Aが勝手に甲土地の宅地造成工事のために甲土地に土砂を搬入したとしても,Aは,自己の持分に基づき,甲土地全体を使用収益する権原を有しているから,Cは,Aに対し,自己の持分権に基づく妨害排除請求権を行使して,甲土地上に搬入された土砂の撤去を請求することはできない。



     上記の設問は,いずれも最判平10.3.24を題材とするものです。

     抽象化すれば,『共有』と『宅地造成』です。この2つの用語を見ることにより,脳内検索を行い,最判平10.3.24を思い出す必要があります。

     ところで,最判平10.3.24が一番言いたいことを明らかにしている設問は,上記の設問のうちいずれでしょうか?

     それは,【設問2】の方です。最判平10.3.24は,共有者の一部が勝手に農地を宅地に造成使用としている場合,他の共有者は,その差止めに加えて,原状回復も可能としているからです。そうすると,最判平10.3.24を題材とする問題でも,差止めの方を出題する設問と,それに加えて原状回復の方を出題する設問がありますので,ちゃんと区別した上で押さえておく必要があります。本試験では,対話問題におけるアホな学生が,教授に『勝手に農地を宅地にした場合,どんな請求ができますか?』って問われたことに対し,『差止め請求は可能ですが,原状回復請求はできません。』って回答した場合,ちゃんと区別して覚えておかないと,ひっかかってしまいますから。つまり,上記【設問1】と【設問2】は,【設問1】が平成19年度の出題で新しいものの,重要なのは平成17年の出題である【設問2】の方ということです。

     もう一つ,ところで。

     最判平10.3.24の実際の事案が,上記設問における農地宅地事例であったわけですが,最判平10.3.24は,当ては目をする前に,一般的なことを述べています。以下に引用します。

     

     共有者の一部が他の共有者の同意を得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には,他の共有者は,各自の共有持分権に基づいて,右行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく,共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き,右行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできると解するのが相当である。

     

     何のために引用したか分かりますか?

     そう,この最判平10.3.24という重要判例は,過去に何度も農地宅地事例で出題されているものの,必ずしも農地宅地事例で出題されるとは限らないということです。

     そうすると,上記の『共有』と『宅地造成』というキーワードも当然押さえておく必要はありますが,それにとどまらず,『勝手に変更事例』においても,差止め+原状回復を請求することができるということも押さえておく必要があります。

     一見,誰でも使用する過去問集を中心に置く勉強であり,地味で,誰でもやるものであるがゆえ効果が薄そうな感じがある過去問解析。本当は,とても深く,完璧な過去問解析があれば(そもそもそれが存在するのか分かりませんが,僕はそれを目指しています。),確実に合格することができます。

     過去問は,何が(論点),どういう風に(形式)出題されるかが隠された宝庫です。いえ,隠されてもおらず,受験生の方がちゃんと見ていないだけです。

     受験生の方がちゃんと見ていないって話に関連する話,ちょっとして良いですか?

     受験生の方がする,マークミス。

     本試験の問題の導入部をよく見てください。『正しいものの組合せ』とかそういう部分,ちゃんとゴシック体になっていますよね?めっちゃ親切じゃないですか?にもかかわらず,正しいものと誤っているものの選択を間違う?2と3を取り違えてマークした?  あり得ませんし,救いようがありませんね。

     そんなしょうもないことで落とされてはダメです。ちゃんとマークしてください。この部分は,まさに皆さん自身の問題であり,僕たち予備校関係者がどんな手段を使っても,治せないところです。治すのは簡単です。見直せば良いんです。しかもその見直しは,内容の見直しではなく,マークミスの有無だけの確認です。単に『見直す』のではなく,まず『マークミスの有無の確認』,次に『内容の見直し』というように,見直しのやり方というか内容というか順序についても,一度考えてみてください。

     話を戻します。

     が,今回で抽象化の話は終わり。で良いですか?

     大体の内容が分かれば,あとは実践のみです。

     具体的な問題(前回予告したとおり,平成21年度前後の問題から)を検討していこうと思いますが,いかがでしょう?

     賛成の方は,記事の最後の『拍手』でもしてやってください。

     では,また。 
     
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