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    定款の定めの優劣

     こんばんは@新幹線です。

     今日は,講義で仮差押解放金と仮処分解放金の解説をしたのですが,何回説明しても,ドキドキする論点です。

     今回も,商業登記法の記述式問題の話をさせてください。

     内容は,掲題のとおり,定款の定めの優劣について。結構長文になりそうな予感。

     
     まずは,過去に問われたことがある論点の話から始めましょう。

     監査役設置会社でない株式会社(委員会設置会社でないものとします。)は,役員等の会社に対する責任の免除に関する規定を設定することができないため,その登記の申請は,受理されません(会社法426条1項,商登法24条6号)。これは,平成19年度に出題された申請代理不可事項。

     では,逆の場合?はどうでしょう?

     すなわち,役員等の会社に対する責任の免除に関する規定を設定し,その登記をしている株式会社は,監査役設置会社の定めを廃止することができるでしょうか(委員会設置会社にはならないものとします。)?

     考え方としては,2つあります。監査役設置会社の定めの廃止を認めないとする考え方と,廃止はできるが役員等の会社に対する責任の免除に関する規定の効力が失われるとする考え方。

     正解は,後者です。定款の効力としては,監査役設置会社の定めの方が,役員等の会社に対する責任の免除に関する規定よりも強いからです。

     監査役設置会社の定めの廃止の登記の申請と同時に,役員等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止の登記を申請する必要があります(松井・ハンドブックP488)。

     この点は,何となく記述式問題の論点として出題されそうな気がしませんか?

     ただね,問題があります。上記の場合,自動的に廃止されたものになるような役員等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止について,ちゃんと定款の変更をしなければならないとされていることです(松井・ハンドブックP488)。

     そうすると,試験委員は,上記の論点を普通に出題するような場合は,監査役設置会社の定めを廃止する定款の変更の後に役員等の会社に対する責任の免除に関する規定を廃止する定款の変更がされている株主総会の議事録を示すことになりますが,この出題手法を使うと,論点が死んでしまいます。

     だって,この論点って,『連動』することに気付けるか?って論点ですから。

     じゃあ,どうやって出題するか?

     例えば,司法書士が,監査役設置会社の定めを廃止する定款の変更だけがされている株主総会の議事録を持参した代表者に対し.『ある定款の変更をしておくことが望ましい』とのアドバイスをしたが,果たしてそのアドバイスとは?って出題手法が考えられますが,『望ましい』ってちょっと不明確です。

     
     論点を変えましょう。

     公開会社,監査役会設置会社又は会計監査人設置会社は,監査役の監査の会計に関するものに限定する旨の定款の定めを設ける定款の変更をすることができません(会社法389条1項)。

     したがって,上記の会社が,上記の定款の変更をした場合は,登記不可事項となります。といっても,上記定めは,『今は』,まだ登記事項とはされていないので,登記不可事項の問いがそもそも登記事項とされていないものを除く趣旨であるとすれば,答案用紙に何も書かないことが正解となります。

     ちなみに,僕たちの記述式対策講座において,以下のような趣旨の問題を出題したところ,結構同じような質問がありました。

    別紙1 公開会社でない株式会社
    別紙3 1 公開会社となる定款の変更
        2 監査役を置く旨の定款の定めを設ける定款の変更
        3 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを設ける定款の変更

     登記不可事項は?

     監査役設置会社の定めが登記できないと考えた方がいらっしゃいましたが,違います。登記不可事項は,なしです(上記3は有効であろうとかなろうと登記事項ではないので。)。勘違いは,おそらく,申請会社が『会計監査限定監査役を置く旨の定款の変更をした。』と捉えているからでしょうが,本当は,申請会社は,『監査役を置く旨の定款の変更をして,その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定した。』のです。ちなみに,仮に,監査役を置く旨の定款の変更が効力を生じないとした場合には,公開会社となる定款の変更に関する登記(例えば,株式の譲渡制限に関する規定の廃止の登記等)の申請もできないことに注意しましょう。監査役設置会社の登記がされていない公開会社でない株式会社は,株式の譲渡制限に関する規定の廃止の登記等と監査役設置会社の定めの登記を同時に申請する必要があります。

     話を戻します。 公開会社,監査役会設置会社又は会計監査人設置会社は,監査役の監査の会計に関するものに限定する旨の定款の定めを設ける定款の変更をすることができないということを確認しました。

     じゃあ,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社が,監査役会設置会社,会計監査人設置会社又は大会社となった場合,当該定めはどうなるのでしょうか?また,監査役の任期はどうなるのでしょうか? なお,公開会社となった場合が含まれていないは,公開会社になると,上記の定款の定めの有無とは関係なく,監査役の任期が満了することになるからです。

     この場合について,会社法の立案担当者は,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更を行わなかったとしても,当該定款の定めはその効力を失い,監査役の任期は満了するとしています(相澤・会社法解説P112)。

     でも,先にした役員等の会社に対する責任の免除に関する規定の話をと同じで,監査役について任期満了による変更の登記を申請する場合には,正しく定款の変更をしておく必要があります(松井・ハンドブックP449)。

     そうなると,やはり,先にした役員等の会社に対する責任の免除に関する規定の話をと同じで,記述式問題の論点とされそうなこの論点,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしている株主総会の議事録を示してしまうと論点にならず,結局,アドバイス問題にならざるを得ないということになります。

     以上,連動する登記があるのでそれに気付かせ,その登記の申請をさせたい反面,連動する登記に係る定款の変更がされた株主総会の議事録をいかに示すかについて悩みが大きい論点の話でした。

     そうそう,ついでにいっておくと,同じことは,譲渡承認機関を取締役会とする会社が取締役会設置会社の定めを廃止したり,解散した場合にも生じ,譲渡承認機関の変更に係る株式の譲渡制限に関する規定の変更の登記が必要となります。定款の変更がちゃんとあればの話。また,取締役会を廃止すると,役員等の会社に対する責任の免除に関する規定における免除機関にも変更が生じますので,その変更に係る登記が必要となります。定款の変更がちゃんとあればの話。

     今日も,おもしろくないですが,おもしろく(重く)はなったと自負しております…。

     では,また。

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