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    梅田校 第1回 3月25日(火) 18:30~21:30
        第2回 3月30日(日) 18:00~21:00




     こんばんは。

     今日は,憲法の話。

     最近,松本先生のブログに憲法のことが書かれていました。

     司法書士試験の憲法の学習方法(1)

     僕が気になったのは,以下の記述。

     「平成22年度から(平成22年度第2問),判旨が問われるようになった」と言っている講師がいますが(しかも全国区の講師),司法書士試験は,最初から普通に判旨まで聞いてくる試験です。



     ここでいう「全国区の講師」が誰を意味するかはさておき(この点は,後述します。),僕は,「最初から普通に判旨まで聞いてくる試験」という部分に納得できません。

     というのも,判例が問われる以上,判旨が問われるのはいわば当たり前のことであり,僕を始めとする講師がいう「判旨」の出題とは,そういうところを言っているわけではないからです。

     どういうことかというと,松本先生が具体例として挙げた出題は,たしかに判旨が問われていますが,これは判例の内容を問う問題である以上当たり前のことであり,それ以上に重要なことは,それらの出題は,判例の要旨が問われているという点です。

     つまり,判旨は判旨でも,それが要旨である以上,厳密な意味での判旨が問われたとはいえないのです。

     以下,松本先生の記事を引用しつつ,説明します。

     まずは,平成15年度の問題。

    (平成15年度第1問)
    3 裁判所が,表現内容が真実でないことが明白な出版物について,その公刊により名誉侵害の被害者が重大かつ著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合に,仮処分による出版物の事前差止めを行ったとしても,憲法に違反しない。
    → 正しい
    ※最大判昭61.6.11北方ジャーナル事件(『Realistic Text憲法』P48)の判旨(「専ら公益を図る目的のものでないことが明白」でなくても,「表現内容が真実ではなく」,被害者が重大かつ著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合ならば出版物の事前差止めが可能)を問う問題



     たしかにそうですが,最大判昭61.6.11の要旨は,次のとおりです。

     この程度の内容は,判旨などという大げさのものではなく,テキストの内容の範囲内でしょう。

    一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
    二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
    三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
    四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。



     次に,平成17年度の問題。

    (平成17年度第1問)
    オ 何人も,その承諾なしに,みだりにその容ぼうを撮影されない自由を有しているから,警察官が,正当な理由もないのに,個人の容ぼうを撮影することは,憲法第13条の趣旨に反し,許されない。
    → 正しい
    ※最大判昭44.12.24(京都府学連事件(『Realistic Text憲法』P23)の判旨(「正当な理由もないのに,個人の容ぼう等を撮影することは,憲法13条の趣旨に反し,許されない」)を問う問題(この判例の結論は,デモ隊の負けだが,この肢はそこを聞いていない)



     たしかにそうですが,最大判昭44.12.24の要旨は,次のとおりです。

    一 昭和二九年京都市条例第一〇号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例は、憲法二一条に違反しない。
    二 何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない。
    三 警察官による個人の容ぼう等の写真撮影は、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、証拠保全の必要性および緊急性があり、その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときは、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、憲法一三条、三五条に違反しない。

     これもまた,この程度の内容は,判旨などという大げさのものではなく,テキストの内容の範囲内でしょう。

     最後に,『平成22年度から(平成22年度第2問),判旨が問われるようになったと言う全国区の講師』が誰なのか?という点についてですが,僕でないことはたしかです(自信なし。)。

     なぜなら,僕は,平成22年度ではなく,平成21年度から判旨が問われるようになったと言う講師だから。

    【H21-am2-イ】

     国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民である在外国民についても,憲法によって選挙権が保障されており,国は,選挙の公正の確保に留意しつつ,その選挙権の行使を現実的に可能にするために,所要の措置を執るべき責務を負うが,選挙の公正を確保しつつそのような措置を執ることが事実上不能又は著しく困難であると認められる場合には,在外国民が選挙権を行使することができないこととなっても違憲とはいえない。



     この設問の題材である最大判平17.9.14の要旨は,次のとおりです。

    1 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。
    2 公職選挙法附則8項の規定のうち,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。
    3 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。
    4 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民は,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録され ていることに基づいて投票をすることができる地位にある。
    5 国会議員の立法行為又は立法不作為は,その立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受ける。
    6 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使の機会を確保するためには,上記国民に上記選挙権の行使を認める制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,上記国民の国政選挙における投票を可能にするための法律案が廃案となった後,平成8年10月20日の衆議院議員総選挙の施行に至るまで10年以上の長きにわたって国会が上記投票を可能にするための立法措置を執らなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきであり,国は,上記選挙において投票をすることができなかったことにより精神的苦痛を被った上記国民に対し,慰謝料各5000円の支払義務を負う。
    (1,2,4~6につき,補足意見,反対意見がある。)



     ね? 要旨にないけど判旨にあって,ちゃんと判旨の勉強してないと解けない設問でしょ?

     以上,受験生の方にとってはあまり実益はありませんが,司法書士試験マニアとして松本先生には進言しておきたい内容でした。


     松本先生,僕が返信してないことに今日気付いたので(笑),近々返信します。


     では,また。


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