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    疑義問(1)
    【新しい電子書籍】


    NEW!!! 平成10年~平成26年までの民法の重要判例をすべて示しています。すべての問題について一問一答形式の設問付きです。
       民法の重要判例[平成10年-平成26年]


    * この電子書籍の紹介については,この記事をご参照ください。


    □ 平成26年会社法改正基本通達完全対応問題集
    □ 商業登記規則等の一部改正の解説  
    □ 商業登記規則61条2項~4項の解説
    □ 平成26年会社法等一部改正の解説
    □ 平成26年会社法等一部改正一問一答問題集




    【直近の企画】

     本試験における民法
     本試験における不動産登記法(択一式問題)
     本試験における会社法及び商法
     本試験における商業登記法(択一式問題)
     
     自分裁判(1)
     自分裁判(2・完)

     商業登記における前提名変登記!?(1)
     商業登記における前提名変登記!?(2・完)

     本試験に棲む魔物(1)
     本試験に棲む魔物(2・完)

     補欠役員の論点(1)
     補欠役員の論点(2)

     区分建物の罠(1)
     区分建物の罠(2)
     区分建物の罠(3・完)

     昭和VS平成(1)
     昭和VS平成(2)
     昭和VS平成(3)
     昭和VS平成(4・完)

     定款の自動変更(1)
     定款の自動変更(2)
     定款の自動変更(3・完)




     こんばんは。

     予告通り,疑義問開講します。

     ガイダンス的なものは,以下の記事をお読みください。

     参考:  【開講予告】疑義問(0)

     記念すべき第1回に取り上げるのは,以下の設問です。


    【S59-2-2】

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合を除き,許されない。




     まず始めにお断りしておくことがあります。

     それは,上記【S59-2-2】の問題文は,本当に上記の問題文であるかは不明だということ。

     法務省が問題の持ち帰りを認めるようになったのは平成11年度のことであり,それよりも前は,予備校が雇ったアルバイトの方が問題文を暗記していた時代です。

     だから,基本的に古い過去問について,問題文の表現に拘りすぎることは,本当に無駄なことです。

     なぜなら,古い過去問の問題文の拘ることは,いつの時代の誰かも分からないアルバイトの方の記憶を信じるということですから。

     なお,予備校間でも古い過去問については問題文が異なるのでご注意ください。

     
     では,【S59-2-2】を検討しましょう。

     皆さんの多くは,【S59-2-2】の正誤を,正しいと判断したと思います。

     すなわち,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求はできると考えたということです。

     そして,多くの予備校の過去問集における解答も,同じだと思います。

     でも,本当にそうでしょうか?


     確認したい判例があります。

     最判平10.6.30です。

     要旨は,次のとおりであり,太字にしたのは僕です(以下判例を引用する場合において同じ。)。


     1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において,当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り,許されるものと解するのが相当である。




     読めばすぐに分かるとおり,この判例は,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の相殺は,原則として,できるとしたものです。

     ちなみに,この部分については,H24-2-オで出題済みです。

    【H24-2-オ】

     Aは,Bに対して有する1,000万円の貸金債権のうちの一部の請求であることを明示して,Bに対し,200万円の支払を求める訴えを提起した。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
     AのBに対する訴訟の係属中にBがAに対して請負代金2,000万円の支払を求める別訴を提起した場合には,当該別訴において,Aは,貸金債権の残部である800万円を自働債権として相殺の抗弁を主張することができない。[×]



     
     ここで再度確認しましょう。

     【S59-2-2】で問題となっていた点を。

     問題となっていたのは,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求ができるかどうかです。

     実は,上記最判平10.6.30は,この点についても明らかにしています。

     

     1個の債権が訴訟上分割して行使された場合には,実質的な争点が共通であるため,ある程度審理の重複が生ずることは避け難く,応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上,債権の一部と残部とで異なる判決がされ,事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そうすると,…1個の債権の一部について訴えの提起ないし相殺の主張を許容した場合に,その残部について,訴えを提起し,あるいは,これをもって他の債権との相殺を主張することができるかについては,別途に検討を要するところであり,残部請求が当然に許容されることになるものとはいえない




     判例は,明示的一部請求である前訴係属中において,残部の請求ができるかについて,原則として,できないといっています。

     このように,最判平10.6.30は,明示的一部請求である前訴係属中における残部による相殺の可否残部の請求の可否について,違いを設けています。

      違いを設けた理由について,以下のように説明しています。

     

     こと相殺の抗弁に関しては,訴えの提起と異なり,相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり,相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから,1個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは,債権の発生事由,一部請求がされるに至った経緯,その後の審理経過等にかんがみ,債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存する場合を除いて,正当な防御権の行使として許容されるものと解すべきである。




     簡単にいえば,相殺は売られたケンカへの反撃なので仕方ないってことです。


     以上の解説を踏まえて,もう一度疑義問を確認しましょう。


    【S59-2-2】

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合を除き,許されない。




     今も皆さんの判断は,「正しい」ですか?

     違いますよね?

     正誤は,「誤り」です。

     なぜなら,

     同一債権の数量的一部を請求する前訴が係属中に後訴で残部を請求することは,前訴で一部請求であることを明示した場合であっても,原則として許されない

     からです。


     各予備校(TACを含みます。)は,過去問を改正に対応させるだけじゃなくて,ちゃんと判例にも正確に対応させるべきです。

     【S59-2-2】 が疑義問となったのは,最判平10.6.30を踏まえた修正を加えていないからです。


     各予備校を代表して,皆さん,




     ごめんなさい!!!




     あと,明示的一部請求の判例を全般的に押さえておきましょう。

     こんな判例もありますよ。

     参考: 民事訴訟法の判例


     では,また。


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