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    このブログは,多くの受験生の方が司法書士試験に合格するために開設しました。
    法定地上権に関する最新判例

     法定地上権に関する最新判例(最判平19.7.6)をご紹介します。

     http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070706153111.pdf

     詳しくは,以下のとおりです。

     以下,四角の囲みの中にある文章が判旨で,そうでない文章が,僕の解説です。

     

     土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立するというべきである。


     
     要は,法定地上権が成立しているかの要件である『同一所有者要件』の充足性の判断を,1番抵当権(甲抵当権)とするのか,それとも,2番抵当権(乙抵当権)とするのかの問題です。

     この点について,最高裁は,2番抵当権(乙抵当権)を基準とすべきと判断しました。

     

    その理由は,次のとおりである。
     上記のような場合,乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては,仮に,甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば,法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし,抵当権は,被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって,甲抵当権が被担保債権の弁済,設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから,乙抵当権者としては,そのことを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって,甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって,法定地上権が成立することを認めても,乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして,甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから,競売による法定地上権の成否を判断するに当たり,甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると,民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を,甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。



     例えば,Aの所有する土地にBの建物が築造されている場合において,Xが当該土地に1番抵当権を設定を受けたとします。

     その後,Aが当該建物を取得した後,土地についてYのために2番抵当権を設定しました。

     この場合のYの意思は,

    ① Xの抵当権が解除等により消滅すれば,順位が上昇し,十分な配当を受けることができる。

     というものだけではなく,

    ② Xの抵当権が解除等により消滅し,自己の抵当権だけが残れば,土地と建物の所有者が同一となっているため,法定地上権が成立することになる。

     というものです。

     もし,Xの抵当権が解除等により消滅しなかった場合は,Yは,配当は十分に受けることができないかもしれない反面,法定地上権が成立することはありません(最判平2.1.22。この判例については,判旨の中でも触れられています。)。

     このように,土地に既に1番抵当権が設定され,土地と建物の所有者が同一となった後に土地に2番抵当権を設定する者は,

     順位の上昇に期待するか,それとも,法定地上権の成立を甘受するか,そういった点を考慮しなければならないと,判旨は指摘しています。

     

    民法388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。



     民法388条が,競売時において残存している抵当権を基準に法定地上権成立の要件を判断するものであるということを判断しています。

     そして,最判平2.1.22との整合性を説明。この点は,原判決が誤った理解を示しているため,念のために行ったのでしょう。

     ちなみに,原判決は,次のとおりです。

     推論問題対策として,念のため読んでおくようにして下さい。

     

     土地について二つの抵当権が設定され,先順位抵当権設定当時は土地と地上建物の所有者が異なっていたが,後順位抵当権設定当時は同一人の所有に帰していた場合,抵当権の実行により先順位抵当権が消滅するときには,法定地上権の成立は認められないとするのが判例(最高裁昭和62年(オ)第452号平成2年1月22日第二小法廷判決・民集44巻1号314頁)であるところ,このことは,後順位抵当権の設定後に先順位抵当権の設定契約が解除された場合においても同様であると解すべきである。なぜなら,この場合に法定地上権の成立を認めると,法定地上権の負担のない土地としての担保余力を把握していた後順位抵当権者の利益を不当に害する結果となるからであり,これを避けるために,将来の法定地上権の成立を仮定して担保余力を評価すべきものとすると,担保価値の完全な活用が阻害される不都合が生じる。また,建物所有者としても,もともと先順位抵当権を基準にすれば法定地上権の成立は認められなかったのであり,たまたま先順位抵当権の設定契約が後に解除されたからといって,法定地上権成立の利益を認める必要性はない。



     最後に,過去問分析をしておきましょう。

     平成17年度午前の部第15問イの問題文は,次のとおりです。

     

    Aの所有する乙建物が存在するB所有の甲土地にCのための一番抵当権が設定された後,Aが甲土地の所有権を取得して,同土地にDのための二番抵当権を設定した。この場合において,一番抵当権が実行されたときは,乙建物のための法定地上権は成立しない。



     答えは,正しいです。根拠は,最判平2.1.22です。

     では,問題文変更後の問題を示します。なお,下線部は,問題文の単語を置き換えた箇所を示します。

     

    Aの所有する乙建物が存在するB所有の甲土地にCのための一番抵当権が設定された後,Aが甲土地の所有権を取得して,同土地にDのための二番抵当権を設定した。この場合において,一番抵当権が解除により消滅した後,二番抵当権が実行されたときは,乙建物のための法定地上権は成立しない。



     答えは,誤りです。根拠は,最判平19.7.6です。

     いかがでしょうか?

     僕は,最近の傾向からして,民法の出題における判例の重要性を痛感しているところではありますが,だからといって,最新判例だけが出題されるとは考えていません。

     しかし,この判例を検討することにより,頻出の最判平2.1.22を確認することができるので,ここで紹介することとしました。

     判例を覚える際にも,比較しながら併せて押さえることが重要であるといえます。

     では,また☆



     
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