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    このブログは,多くの受験生の方が司法書士試験に合格するために開設しました。
    最新判例解説講座(2)
     こんにちは☆

     ブログ講座『最新判例解説講座』の第2回です。
    【バックナンバー】
    ▽ 最新判例解説講座(1)




    【第2回-買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である(最判平18.2.7)】

     買戻特約に関する登記については,不動産登記法の択一式問題で問われ(記述式問題での出題可能性は極めて高いです。),譲渡担保については,民法の問題で肢単位で問われ始めていることから,最判平18.2.7を選びました。

     では,事案の解説等を行います。

     久し振りに物語風にしましょう。




    貸金業者ボスY(以下『ボスY』): おい,Xに貸した金を返ってきたか?

    貸金業者子分A(以下『子分A』): いえ,まだです。利息,高すぎましたかね~?

    ボスY: ばかやろ~。お前そんな悠長なこと言ってられっか!?すぐにでも回収してこいっ!それとも,お前の頭で何か担保でも取れるのか?

    子分A: ふっふっふ。ボス,僕を甘く見ないで下さいよ。ちゃんと考えていますよ。債務者Xは,高価な土地を持ってるんですよ。なんと,貸付金額の2倍です。これをせしめて,転売して,転売利益を得ましょう。

    ボスY: 担保の方法は? 抵当権か?不動産質権か?仮登記担保か?譲渡担保か?

    子分A: 抵当権は,実行に手間がかかるし,その点は,不動産質権も同じ。しかも,占有しなければならないのはめんどうです。仮登記担保も,法律ができてから実行がめんどうだし,譲渡担保もそうですが,清算義務があるので,転売利益どころじゃなくなります。

    ボスY: じゃあ,どうすんだよ?

    子分A: ふっふっふ。買戻権を使います。

    ボスY: ??? どういうことだ?

    子分A: つまりですね,私たちの貸付金を売買代金として,債務者Xから不動産を買ったことにするのです。債務者は,売買代金の実質である貸付金を支払わない限り,貸付金の倍する高価な土地の返還を請求することができないというわけです。

    ボスY: ほう。脱法行為的だが,それでいこう。その前にもう一度整理するぞ。我々の貸付金が売買代金になる。我々は,債務者Xから1600万円の土地を800万円の売買代金(貸付金)により取得することになるというわけだな?

     *****

    子分A: ボス!どうしましょう?裁判になってしまいました!

    ボスY: なぜだ!?我々は,真正な買戻特約付売買契約を締結し,それに基づき,買戻期間中に売買代金(貸付金)を支払わなかった債務者Xに対して,土地の明渡しを求めているだろう?

    子分A: そうなんですが,債務者Xの奴が,『これは,債権担保が目的で,しかも占有が移転していないから,譲渡担保だ!』とか言い出したんですよ…。

    ボスY: ………。とりあえず,最高裁の判決を待とう…。




     以下,判旨を示します(下線は,筆者が挿入。)。 

     

     真正な買戻特約付売買契約においては,売主は,買戻しの期間内に買主が支払った代金及び契約の費用を返還することができなければ,目的不動産を取り戻すことができなくなり,目的不動産の価額(目的不動産を適正に評価した金額)が買主が支払った代金及び契約の費用を上回る場合も,買主は,譲渡担保契約であれば認められる清算金の支払義務(最高裁昭和42年(オ)第1279号同46年3月25日第一小法廷判決・民集25巻2号208頁参照)を負わない(民法579条前段,580条,583条1項)。このような効果は,当該契約が債権担保の目的を有する場合には認めることができず,買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産を何らかの債権の担保とする目的で締結された契約は,譲渡担保契約と解するのが相当である。
     そして,真正な買戻特約付売買契約であれば,売主から買主への目的不動産の占有の移転を伴うのが通常であり,民法も,これを前提に,売主が売買契約を解除した場合,当事者が別段の意思を表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなしている(579条後段)。そうすると,買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である






    ボスY: ふむふむ。『買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である。』か。つまり,最高裁は,『買戻特約付売買契約』の形式が採られた契約は,実際にはほとんどの場合,債権担保の目的で締結されているという実態や,これまでの下級審の裁判例において,占有の移転を伴わないものは,ほとんどの場合譲渡担保契約と認められてきたという事情,売買契約が解除された場合の不動産の果実と代金の利息との相殺についての民法の買戻しの規定等を考慮して,占有の移転の有無を重要な判断要素として実態に即した判断をすべきものとしたわけだな。素晴らしい。……。って,負けてんじゃん!!!!

    子分A: (今ごろ気付いたのかよ…このアホボスめ…。)そうです,負けました。ということで,不動産の転売利益の取得な,清算義務のある譲渡担保であることから,かなり難しいです。

    ボスY: ところで,このやり取りにオチはあるのか…?

    子分A: ないです。

    ボスY: では,私から,司法書士試験の受験生のために一言言っておこう。それは,不動産登記法の記述式問題における注意点だ。買戻特約に関する問題の出題可能性が高いわけであるが,それでも,『買戻し』という言葉に拘泥するのではなく,最判平18.2.7を考慮し,譲渡担保であるかどうかをしっかり見極めて欲しい。

     最判平18.2.7が題材となった場合,出題パターンとしては,次の2つが考えられる。

    Ⅰ そもそも買戻しの特約の登記をしないパターン
     この場合は,譲渡担保を原因とする所有権の移転の登記を申請する。

    Ⅱ 買戻しを原因とする所有権の移転の登記をしないパターン

     この場合,登記は不要だと思われます。場合によっては,買戻しの登記及びそれと同時にされた売買を原因とする所有権の移転の登記を抹消し,改めて,譲渡担保を原因とする所有権の移転の登記を申請するかもしれない。

    子分A: ボス,さすがですね。覚えておきます。

    ボスY: ? お前まさか,司法書士試験の受験生なのか?

    子分A: そうですよ。面接時に言いましたが…?

    ボスY: …。まあ良い。オチもないので,これで終わりとしよう。




     以上が,最判平18.2.7の解説です。 今回は,過去問関係の話は,なしです。

     では,また☆


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